国籍・手続き

アメリカ国籍取得の手続きガイド:出生証明書からパスポート申請まで【完全マニュアル】

2025年4月20日
読了時間: 8分
アメリカ国籍取得の手続きガイド:出生証明書からパスポート申請まで【完全マニュアル】

出産後に待っている重要なミッション、それがアメリカ国籍取得手続きです。出生証明書、SSN、パスポートの申請手順、必要書類、注意点を時系列で完全解説します。

赤ちゃんへの最初のプレゼント、それは「国籍」

アメリカ合衆国憲法修正第14条は、「アメリカ合衆国で生まれ、その管轄に属するすべての人は、アメリカ合衆国の市民であり、その居住する州の市民である」と定めています。これがいわゆる「出生地主義(Jus Soli)」です。両親が日本人であっても、旅行者であっても、ハワイ(アメリカ領土)で生まれた赤ちゃんは、生まれながらにしてアメリカ市民としての権利(Citizenship)を有することになります。

この「アメリカ国籍」は、将来お子様が世界で活躍するための強力なパスポートとなります。アメリカの大学への進学、アメリカでの就労、居住が自由になるだけでなく、ビザの心配をすることなく世界中を飛び回ることができるのです。多くの日本人にとって、この「将来の選択肢」こそが、ハワイ出産を選択する最大の理由でしょう。

しかし、この権利を法的に確定させ、形にするためには、出産直後の短期間に、親が責任を持って行政手続きを行わなければなりません。慣れない英語での手続き、しかも産後の寝不足の中で...というのは想像以上にハードです。書類の不備があれば、パスポートが発行されず、予定していた帰国便に乗れないというトラブルも起こり得ます。この記事では、その複雑な手続きの流れを、ステップバイステップで、どこよりも詳しく解説します。

全体像:手続きのタイムラインとデッドライン

まずは全体の大まかな流れを把握しましょう。帰国日というデッドラインがあるため、スケジュール管理が命です。特に「パスポート申請」には時間がかかるため、逆算して動く必要があります。

1. 出産当日〜翌日: 病院で出生登録書類(Birth Certificate Worksheet)に記入・提出
2. 生後1週間〜2週間: 保健局で出生証明書(Birth Certificate)が発行可能になる → 取得
3. 生後2週間〜4週間: ソーシャルセキュリティナンバー(SSN)が郵送で届く
4. 生後2週間〜: アメリカパスポート申請(郵便局などで面接、要予約)
5. 生後3週間〜: アメリカパスポート受領(特急申請の場合)
6. 生後3ヶ月以内: 日本の出生届を提出(領事館または日本の役所)
7. 帰国後: 日本のパスポート申請

最短でも生後3週間程度はかかると見ておいた方が安全です。余裕を持って1ヶ月半〜2ヶ月の滞在期間を設定することをお勧めします。

ステップ1: 病院での出生登録(Birth Certificate Worksheet)

戦いは分娩室から始まっています。出産後、病室でゆっくりしていると、病院の事務スタッフ(Birth Clerk)が書類を持ってやってきます。これが「Birth Certificate Worksheet」です。ここで記入した内容が、そのまま州の公式な出生証明書に反映されます。

【超重要】絶対に間違えてはいけないポイント
  • 赤ちゃんの名前(Naming): スペルミスは致命的です。後から修正するには裁判所の許可が必要になるなど、膨大な手間と費用がかかります。First Name, Middle Name, Last Nameを明確に決めておきましょう。特にMiddle Nameを入れるかどうかは事前に夫婦で話し合っておく必要があります。日本名にはない概念ですが、アメリカでは一般的です。ミドルネームを入れておくと、将来アメリカで生活する際に役立つことがあります(同姓同名の識別など)。
  • 両親の情報: 名前、生年月日、出身地など。パスポートの表記と完全に一致させてください。母親の旧姓(Maiden Name)の記入も求められます。
  • 郵送先住所(Mailing Address): SSNカードが届く住所です。滞在先のコンドミニアムの住所を正確に記入し、かつ郵便受けに自分の名前(親の名前)を貼っておくなどの対策が必要です。アメリカの郵便事情は日本ほど良くないので、不達リスクを減らす工夫が必要です。
アメリカのパスポート
これが手続きのゴール!紺色のパスポートを取得しましょう

ステップ2: 出生証明書(Birth Certificate)の取得

病院が保健局(Department of Health)にデータを送信し、登録処理が完了すると、出生証明書が発行可能になります。通常、退院から1週間〜10日程度かかります。

取得方法
ハワイ州保健局(Honolulu Vital Records Office)の窓口に直接取りに行くのが確実で早いです。パンチボウルストリートにあります。オンライン注文(VitalChek)もできますが、郵送に時間がかかるため、短期滞在者には向きません。

必要枚数
最低でも3〜5枚は取得しましょう。1枚目は$10、2枚目以降は$4(価格は変動します)とお手頃です。
  • パスポート申請用(原本提出、戻ってきません): 1枚
  • 日本の出生届用(原本提出、戻ってきません): 1枚
  • 日本のパスポート申請用(帰国後、または領事館で必要): 1枚
  • 将来の予備(学校入学、SSN再発行、免許取得など): 1〜2枚
特に日本の役所に提出する分は「原本還付」されないことが多いので、多めに持っておくのが安心です。

ステップ3: ソーシャルセキュリティナンバー(SSN)の到着

SSN(社会保障番号)は、アメリカ人が一生使い続けるID番号です。病院での出生登録時に「SSNを申請する」という欄にチェックを入れておけば、自動的に処理され、指定した住所にカードが郵送されてきます。通常、出生から2〜4週間で届きます。

注意点
SSNカードはペラペラの紙のカードです。重要書類に見えないかもしれませんが、再発行が非常に面倒な超重要書類です。届いたら写真を撮り、金庫などで厳重に保管してください。万が一帰国までに届かない場合は、カパフラにあるSocial Security Administrationオフィス(Prince Kuhio Federal Building内)に出向いて番号を確認する必要があります(パスポート申請には番号さえ分かればカード自体は必須ではありません)。

ステップ4: アメリカパスポートの申請(最大の難関)

出生証明書を手に入れたら、いよいよパスポート申請です。これが帰国への最終関門です。

申請場所
一部の郵便局(USPS)や、連邦ビルのパスポートセンターで申請できます。多くの場所で事前予約(Appointment)が必須です。ハワイの郵便局は予約が取りにくいことで有名なので、渡航前から予約状況をチェックし、可能であれば早めに予約枠を押さえておくことが攻略の鍵です(ただし、出生証明書がないと申請できないので、タイミングが難しいところです)。

必要書類
1. 申請書(DS-11): オンラインで作成して印刷(片面印刷!)するか、手書きで黒インクで記入します。署名欄は窓口で係官の面前で書くので、空欄にしておいてください。
2. 出生証明書(原本): 提出します。
3. 赤ちゃんの証明写真: 2x2インチ、白背景、目を開けていること。赤ちゃん(特に新生児)の規格通りの写真を撮るのは至難の業です。CVSやWalgreens、Longs Drugsなどの写真サービスを利用するか、自宅で白いシーツの上に寝かせて何度も撮影し、アプリで加工・コンビニ印刷するのがおすすめです。影が入らないように注意してください。
4. 両親のパスポート(原本とコピー): 親の身分証明です。コピーは表裏必要です。
5. 申請料: マネーオーダー(郵便為替)や小切手で支払います。現金は受け付けない場所が多いです。クレジットカードは窓口の手数料支払いに使える場合がありますが、パスポート代金そのものは小切手等が必要です。

超重要ルール:両親揃って出頭
16歳未満の子供のパスポート申請には、両親と本人の全員が申請窓口に行く必要があります。これが「Two Parent Consent Law」です。もしパパが仕事で先に帰国してしまって不在の場合、「DS-3053」という同意書を提出しなければなりません。この同意書は、日本のアメリカ大使館や領事館で公証(Notarization)を受けたものでなければならず、手続きが非常に煩雑になります。可能な限り、パスポート申請まではパパもハワイに滞在することを強く推奨します。

特急申請(Expedited Service)
通常のプロセスでは発行に6〜8週間かかります。これでは帰国に間に合いません。追加料金($60)を支払って「Expedited Service」を利用しましょう。これなら郵送期間を含めて2〜3週間程度で手元に届きます。さらに急ぐ場合(帰国便が14日以内に迫っている場合)は、連邦ビル(Honolulu Passport Agency)での緊急発行(Urgent Travel Service)を予約することができます。電話予約が必要で、早朝から電話しても繋がりにくいですが、予約が取れれば即日〜翌日に発行してもらえます。

ステップ5: 日本の出生届(日本国籍の留保)

ここまではアメリカの手続きでしたが、日本側の手続きも忘れてはいけません。日本国籍を持つ親から生まれた子は、海外で生まれても日本国籍を取得できますが、出生から3ヶ月以内に出生届を出し、「日本国籍を留保する」という意思表示をしなければ、日本国籍を喪失してしまいます。これを「国籍留保の届出」といいます。

提出先と方法
1. 在ホノルル日本国総領事館: 滞在中に提出できます。戸籍への反映には1〜2ヶ月かかります。
2. 日本の本籍地役場: 帰国後に提出します。または郵送で日本の家族に託して提出してもらうことも可能です。こちらの方が戸籍反映が早い(1週間程度)場合が多いので、急いで日本のパスポートを作りたい場合はこちらがおすすめです。

必要書類
  • 出生届書(領事館で入手またはダウンロード。A4サイズ)
  • 出生証明書(原本)
  • 出生証明書の和訳文(自分で作成してOK。Banyan Babyでテンプレートを用意しています)
  • 両親の戸籍謄本(原本)

ここで最も重要なのは、出生届の「その他」欄にある「日本国籍を留保する」という署名欄に、必ず署名・捺印することです。これがないと国籍を失います。絶対に忘れないでください。

専門家のサポートを活用しよう

いかがでしたか?読むだけで疲れてしまったかもしれません。産後の体調が優れない中、泣き止まない赤ちゃんを抱えて、英語で役所と交渉し、書類を不備なく揃える...というのは、正直言って大変なストレスです。書類の些細なミス(スペルミスや、ペンの色の違いなど)で受理されず、何度も足を運ぶことになるケースも珍しくありません。

Banyan Babyでは、これらの行政手続きをトータルでサポートする代行サービスを提供しています。書類の記入代行、写真撮影のコツ伝授、パスポート申請への同行通訳、出生証明書の取得代行など、経験豊富なスタッフが手取り足取りサポートします。面倒な手続きはプロに任せて、あなたは赤ちゃんとのかけがえのないハワイ時間を楽しんでください。

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